腸の病気のお話
お久しぶりです。院長の永山です。
突然ですが、今回は腸リンパ管拡張症という病気のお話をさせて頂きます。
腸リンパ管拡張症とは、何らかの理由(炎症や形成以上、腫瘍など)によって腸のリンパ液の流れが阻害されて腸内に流れ出てくる病気です。リンパ液にはタンパクやコレステロールが多く含まれるのでこれらの血中濃度が低下します。
症状は主に慢性の下痢や削痩、腹水貯留で、血栓症を併発することもあります。
患者様プロフィールと経過です
マルコちゃん(仮) ジャックラッセルテリア メス(避妊済み) 11歳
1年前から継続した軟便、下痢と低タンパク血症があったのですが、来院1週間前からひどくなってきたとのことで受診されました。
他院で低脂肪フードへの変更やステロイドの内服を処方されたのですが、長期にわたり症状の改善はみられなかったとのことでした。
当院での血液検査でも血中アルブミン濃度が1.6g/dl(正常値2.6~4.0)、総コレステロールが90mg/dl(正常値111~312)で低タンパク血症と低コレステロール血症を呈していました。アルブミンは体にとって重要な血中タンパク質で1.5未満で腹水貯留が出るといわれていますので、かなり重篤な状態だといえます。
また、超音波画像では腸粘膜に縦のラインがみられます(写真○内)。これはリンパ管拡張症によくみられる所見です。(画像処理が稚拙で申し訳ありません。アナログ人間なので…)
一般的な検査では、これら以外には特に異常所見は見られなかったのでこの時点ではリンパ管拡張症を第一に疑いました。
本来は更に内視鏡による全身麻酔下での腸内の確認や細胞の検査が必要になります。というのもリンパ腫などの腫瘍に併発して引き起こされることがあるからです。
ただ今回は飼い主様の希望もあり、原発性の腸リンパ管拡張症(他の病気のせいで出たわけじゃないよ、ということです)と仮診断して治療を始めることになりました。
長くなったので、治療は次回にお話しします!